人と生まれても、いのちを比較的に「ないがしろ」にされているグループの人たちがいる。それは開発途上国に貧しく生まれた若い人たちだ。若い男女とは10歳から24歳までの年齢層で、世界に約18億人いる。この人たちは平均1日¥150前後で生活することを強いられ、そのうち1億人は学校にも行かしてもらえない。理由は「貧困」だからだ。国連事務総長の最近の報告によれば、「2010年末には7510万人の若者が雇用されておらず、雇用されていても1億5200万人は給料が低く危険な仕事についている・・・2000~09年には、後発開発途上国に住む20~24歳の女性の31%が18歳以前に出産している・・・毎日15~24歳の3000人がHIVに新規感染している。多くの思春期の少女や若い女性は性的な暴力や虐待に曝されている・・・アフリカでは1億~1.4億人が女性性器削除を受けている」とのことである。当然、少女の人身売買や児童婚も数限りなく見られる。
元気に満ち溢れてはいるが、読み書きが碌に出来ず、定職もなく、毎日ブラブラしている若者たちが町にあふれ、集まって、興奮を求めるとなれば何がおこるであろうか想像するに難くない。そこに見られるのは社会不安であり、往々にして部族間の抗争であり、この様な若者を利用しようとする様々なグループである。そして、必然的に危険に曝されるのは同年代の女性たちである。そして彼らのいのちがいとも簡単に消えていく。多くの途上国の政情が不安であり、世界に争いが絶えないのも「むべなるかな」である。
世界人口の1/4に当たる若者たちが年齢に応じて学校に行くことができ、世の中の秩序を守ることを覚え、まともな職に就くことができ、その上自分たちやまわりの人たちのいのちを大切にすることを学べば、世界は確実に平和に向かって行く。そのため、国際社会は事あるごとに、若者に教育を、職を、リプロダクティブ・ヘルスをと決議している。でも、現実は決して途上国の若者のたちにとって生易しいものではない。彼らが聞くのは常にスローガンであり、見るのは厳しい現実である。そして、政治家の不作為や私たちの無関心が彼らの信頼感を損ね、いのちを粗末なものとしている。
国際社会は、MDGsの目標実現に向けてそれなりの努力を重ね、ある程度の成果を見せている。だが、私たちの努力は満足ということからは程遠い。彼らにとって必要なのは、1)正しいリプロダクティブ・ヘルスの情報であり、必要とするサービスの入手である。2)いのちを育み、健康に生活するための食料と情報の入手である。3)世の為に貢献する若人を育成する教育であり、職業訓練である。そして、4)男女を問わず、お互いに助け合い、慈しみ合うと言う精神構造である。これは、現在の国際社会の支援のあり方ではたやすいことではないが、やりようによっては効果を上げることが出来る。それは、先進国の若人たちを動員して、ピアー・エジュケーション(若者同士の相互啓発・支援)や人間開発プロジェクトを積極的に導入することだ。日本の「青年海外協力隊」やアメリカの「平和部隊」はその先駆けとなり得るし、様々な民間組織も途上国の需要に応えるプロジェクトを支援出来る。世銀や国連諸機関、先進諸国の政府が民間組織と手をつなげば、必要な資金、技術を提供できるし、お互いの長所を生かして、途上国の問題解消や政情安定にも寄与できる。そして世界が少しずつ平和に向かう。これはやれば出来ることである。
各国の若者を動員して、正しい食べ方や生き方の勉強をさせればHIVや他の感染症に対して有効な対処ができる、教育の普及を図ることで児童婚や女児の虐待を減少させることが出来るし、女性に対する不平等や不当な扱いを減らして行くことが出来る。更に、教育は若者たちを社会の有用な人物に育てることができる。要は、こういうお手伝いが出来る人たちが「手を伸ばす」のか伸ばさないかにかかっているのだ。世界で不遇をかこっている若者に充実した人生を送らせ、世界の将来を明るいものにするのか、それとも、今の逼塞した状態に放置しておくのか、全て私たちの考え方や地球の将来にどう対処するのかという決意が重要なカギを握っているのだ。
さあ、私たちは何をすれば良いのだろう? 今まで通り、自分のことだけ考えていれば良いのか、それとも、皆で世界の将来を明るいものにするために一歩踏み出すのか、この辺で決めなければならない。日本の若者が立ち上がり、世界平和の魁となることを願うのみである。
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