2050は、2月16日に樋口恵子さんをお迎えして、超高齢化時代を迎えた日本の社会、そのための対策や考え方などについてお話を伺いました。巧みな話術、新しい視点、ありとあらゆる意味で考えさせられ、感銘を受ける講演でした。日本は本当に新しい時代に突入し、ご指摘のように新しい考え方と新しい政策をもって「大介護時代」に対処しなければなりませんね。
自分が後期高齢者と分類され、物忘れも激しくなってきたことなどから、私としては介護するにせよ、されるにせよ、考えさせられることが多くありました。そのうち「これだけは」という二点を取り上げて皆様と分かちあいたいと存じます。
(1) 先ず私たちが心がけなければいけないことは、私たち自身が高齢者、または、定年退職者と呼ばれる前に、いわゆる成人病の兆候を持たない、健康体でなければならないということです。コレステロール値が正常である、骨密度も低くない、血圧も高くない、特に持病と称するものもない。気分的にも若い人たちに負けてはいないし、いられない。定年になっても、社会のために何か貢献したいと前向きに心を持つことが重要ではないでしょうか? 年齢を重ねれば肉体的な機能はいやでも下り坂になります。これは避けられないことですが、本人の心がけ次第でその速度を緩めることはできます。
常に健康であり、明るく前向きな心を持っているためには、そのための毎日の努力が必要です。節制のある生活、つまり、自分の欲望を存分に満たす行動はほどほどにしないと、肉体は悲鳴を上げるでしょう。アルコールやニコチンの限りない摂取、高たんぱく、高カロリー食品、添加物がどっさり入った食品、工場で加工・製造された食品、インスタント食品などを毎日食べ続けていれば、体中に脂肪がたまり、臓器の機能は低下し、自然治癒力も低下します。現代の市場によって消費者に対して大攻勢をかけている宣伝活動に誘導されている食生活を10年~15年も続ければ必ず成人病を宣言されます。癌や心臓病を病まず、アルツハイマーにもかかりたくなければ、私たちは、現在の宣伝を鵜呑みにし、少しでも安いもの、少しでも手抜きのできるものを求めるという食生活を根本的に改める必要があります。さまざまな生活習慣病の兆候を示している人々も、生活習慣と食事を改めれば治癒いたします。それは、お医者様にまかせっきりにせず、自分で自分の健康を管理するということです。
更に大切なことは、私たちが「自分にとって何が大切か、何をしなければならないか」ということを他人任せにせず、自分で考え、自分の健康と将来に責任を持つことではないでしょうか?これをしないと、私たちはある年齢になると他人様のお世話にならざるを得ない介護を必要とする人になってしまいます。
(2)
人が活動的であり、健康であるためには、その人が「生きる目的」をはっきりと持つことが必要ではないでしょうか?私の国連時代の経験が教えてくれたことは、国際社会で大活躍し、功成り名を遂げて引退し、余生を安楽に生きようとした方々の多くが2~3年で亡くなってしまったということです。つまり、引退したことによって、それまで拠り所にしていた「人生の目標」がなくなり、生きる張り合いを失ってしまったからです。
いくつになっても、世のため、社会のために貢献している、貢献できるという確信が必要です。それは収入を得ることではない、他人様にサービスを提供するということです。自分の特技、活動によって、周りの人々を支えているのだとか、地域社会、老人、子どもたちのために、または、世界の社会的弱者のために一肌脱いでいるといった自覚です。言い換えますと、引退したら、自分だけのために生きるのではなく、「他人様」のために生きるのだという心構えが必要ではないでしょうか?
2050の中国代表をしてくださっている孫若桓先生は今年97歳です。病気知らずで矍鑠としています。頭脳も明晰で、私たちと山に出かけて植林をします。孫先生の生き方をみていると、粗食で小食。お酒や煙草はやりません。ご飯は、なんでもゆっくりとよく噛んで召し上がります。そして、節制を保ち、正義感を持ち、散歩を欠かさず、環境保全や貧困農民救済のために情熱を燃やしていらっしゃいます。これぞ私たちが見習うべき生き方ではないかと私は確信しています。
皆様、いかがでしょう。孫先生のような生き方を選択すれば、医療費はかからず、他人様のお世話にならず、輝かしい生涯が送れるのではないでしょうか?
人生の選択は各人が選ぶもの、老後の健康状態も各人の選んだライフスタイルの結果でしかありません。好きなものを食べ、飲んで、他人様のお世話になるのか、それとも、孫先生のように健康でいるのか、これも各人の選択によります。