2008年5月23日金曜日

大気温暖化について




 国連IPCCは「大気温暖化は人間の活動によって引き起こされ、悪化している」と述べ、元米国副大統領のアル・ゴア氏は迫り来る危機に警鐘をならし、様々な対策を提案している。そして両者とも2007年度のノーベル平和賞を授与されている。 しかし、私たち日本国民はその深刻さを実感しないが如く、高水準な生活を変えようとせず、なんらの危機感も示すことはない。すべて現状維持である。政府の打つ手は全て生ぬるく、決め手を欠いている。国際社会における討論でも、各国の国益と経済が最優先であって、先進工業国と途上国の間での責任論が声高に論じられ、人類の将来のための抜本的な対策はすべて先送りである。大気温暖化対策に関し、熱っぽい議論が戦わされるのは経済に対する影響であり、忘れ去られているのは、20年後、30年後に人類が直面するに違いない難局である。
 私どもNPO2050では、年3回それぞれ中国で緑化、フィリッピンで女性の自立支援のための活動を展開しているが、現地で実際に見聞し、体験するのは異常気象とそれが人間の生活に与える悪影響である。そして、実感するのは為政者の短期的な視野と無作為である。
 日本は洞爺湖G-8サミットを控えて、議長国としての指導性を発揮して大気温暖化対策を取りまとめようと努力中であるが、新聞の報道などを拝見すると、どうも「決め手を欠く」と言われかねないものばかりである。今、日本の政治指導者に必要なものは、少なくとも50年先を見通す「先見性」と人類の将来を安泰なものにするというビジョンである。過去数年間にわたって、国際社会の潮流に逆らって「ODA減額」を断行した日本はその信頼性を著しく失墜している。往時の信頼を回復するのは容易ではない。したがって、日本はG-8サミットにおいて、世界の将来の為に本気で取り組むという姿勢を明確に打ち出さなければならない。現在の化石燃料依存の経済のあり方を変えぬ限り、大気温暖化問題は悪化し、食糧難、水不足は避けられないことは明白であるので、日本の政治指導者は思い切った解決策を打ち出し、まず自らに課し、その上にODAを大幅に増額して、途上国と共にこの大問題を解決するという態度を明白にすべきである。国民は生活を切り詰め、政府の環境対策に全面的に協力しなければならない。学者や有識者たちは目先の議論のみに捉われることなく長期的な視野を持って国民の啓発に全力を尽くすべきである。人類の将来を安泰なものにするというミッションを明示することが、国際社会での指導性を確立し、信頼を回復する唯一の方法であろう。